一般的な業務委託契約では、物品・製品・成果物の納入や委託業務の実施があった場合、納入・実施の検査をします。
この検査の行程は、納入の行程とは別物ですので、手続きも別々におこないます。
検査に関する条項では、検査の合否の判定基準である、検査基準が最も重要です。
ただ、この検査基準と同様に重要となるのが、検査のスケジュールと手続きです。
これらの規定を記載しておかないと、検査の実施に支障が出ます。
特に、不合格の場合や、委託者が検査しなかった場合の対応を記載しておかないと、その先の契約の行程に進めなくなる恐れがあります。
このため、業務委託契約書には、具体的な検査期間や検査期間が満了した場合の対応を記載して作成ます。
このページでは、こうした検査のスケジュール・手続きについて、解説していきます。
業務委託契約における検査とは?
業務委託契約では委託者による委託業務の検査がある
一般的な業務委託契約書では、受託者から委託者に対し、物品・製品・成果物の納入や委託業務の実施があった場合、委託者は、その納入・実施について検査をします。
これは、当然ながら、納入・実施について、受託者の故意・過失によって、ミス・欠陥(=契約不適合・瑕疵)がないかどうかを確認するためです。
【意味・定義】検査とは?
業務委託契約における「検査」とは、委託者が、受託者から実施された業務について、業務内容に適合しているかどうか確認し、その合否を判定する作業をいう。
検査の結果が合格であれば、委託業務は無事終了となりますが、不合格であれば、受託者は再度業務をやり直すことになります。
また、成果報酬型の業務委託契約では、検査に合格した場合に限り、報酬の支払いがあります。
つまり、検査は、業務が終了するかどうか、そして報酬が発生するかどうかを決める、非常に重要な規定であるといえます。
検査は民法に規定がない=すべて契約当事者が決める
このように、検査の規定は非常に重要ではありますが、実は、民法では、検査に関しては、ほとんど規定がありません。
ちなみに、商法では、次のとおり、売買契約における検査に関する規定はあります。
商法第526条(買主による目的物の検査及び通知)
1 商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならない。
2 前項に規定する場合において、買主は、同項の規定による検査により売買の目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないことを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その不適合を理由とする履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。売買の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないことを直ちに発見することができない場合において、買主が6箇月以内にその不適合を発見したときも、同様とする。
3 前項の規定は、売買の目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないことにつき売主が悪意であった場合には、適用しない。
引用元:商法 | e-Gov法令検索
ただ、これはあくまで、「売買」に関する規定です。
この点について、実態が売買契約である業務委託契約も、ないわけではありません。
しかし、ほとんどの業務委託契約は、売買契約には該当せず、請負契約や(準)委任契約に該当します。
このため、一般的な業務委託契約では、この商法第526条は適用されません。
以上のように、民法や商法では、検査に関する規定はありません。
つまり、検査に関するルールは、委託者と受託者が、業務委託契約で決めなければなりません。
検査仕様と同様に重要となる検査期間・検査期限と手続き
検査の際、最も重要となるのが、検査の合否の判定基準=検査基準です。
また、場合によっては、何を検査するのか(=検査項目)、そしてどのように検査するのか(=検査方法)も重要となります。
これらの、検査項目・検査方法・検査基準につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
そして、これらの検査仕様と同様に重要となるのが、いつまでに検査するのか(=検査期間・検査期限)という点です。
さらに、合否の判定の手続きもまた、重要となります。
ポイント
- 業務委託契約では、受託者による委託業務業務の実施後、委託者による委託業務の検査がある。
- 業務委託契約における「検査」とは、委託者が、受託者から実施された業務について、業務内容に適合しているかどうか確認し、その合否を判定する作業のこと。
- 検査は、民法に規定がない。つまり、検査に関する規定は、委託者と受託者がすべて業務委託契約で決める。
業務委託契約では検査期間・検査期限が重要
受託者にとっては「委託者が検査しない」リスクを抑止できる
検査期間・検査期限は、受託者にとって非常に重要な条項です。
というのも、検査期間・検査期限を具体的な数字で設定しないと、委託者がいつまでたっても検査をしないことがあるからです。
また、仮に検査を始めたとしても、不当に時間をかけて検査をして、合否の判定を出すことを引き伸ばすことがあります。
こうした検査をしない、あるいは検査を引き伸ばすことは、受託者にとって、以下のようなリスクがあります。
検査の不実施・検査の引伸ばしのリスク
- 検査の合格が支払期限の起算点になっている場合は、いつまでたっても報酬・料金・委託料の支払いがない。
- 仮に検査が不合格だった場合に備えるため、事業上のリソース(人材・資金・可動できる工場のラインなど)が他の事業で使えなくなる。
具体的な数字で検査期間・検査期限を決める
検査期間・検査期限は「納入があった日」から起算する
なお、検査期間・検査期限は、「納入があった日」や「委託業務が実施された日」を起算点として、7日間とか、10日間というように、具体的な日付を規定します。
例えば、請負契約の場合は、具体的には、次のような規定となります。
【契約条項の書き方・記載例・具体例】検査に関する条項
第○条(検査)
受託者からの本件製品の納入があった場合、委託者は、納入があった日から起算して10日後以内に、納入された本件製品の検査を実施するものとする。
(※便宜上、表現は簡略化しています)
この点からも、「納入があった日」や、「委託業務が実施された日」の証拠となる書面、つまり「受領証書」や「完了証書」が重要となります。
なお、上記の記載例は、あくまで暦日、つまりカレンダーどおりの「10日後」という意味になりますので、土日祝日も含めた計算となります。
「営業日」を使う場合は明確に定義づける
土日祝日を除外したい場合は、営業日などを定義づけて規定する必要があります。
【契約条項の書き方・記載例・具体例】検査に関する条項
第○条(検査)
受託者からの本件製品の納入があった場合、委託者は、納入があった日から起算して10営業日後以内に、納入された本件製品の検査を実施するものとする。
(※便宜上、表現は簡略化しています)
【契約条項の書き方・記載例・具体例】営業日の定義に関する条項
第○条(営業日)
本契約において、「営業日」とは、行政機関の休日に関する法律(昭和六十三年法律第九十一号)第1条第1項各号列記に規定する日以外の日をいう。
(※便宜上、表現は簡略化しています)
上記の記載例は、行政機関の「営業日」と同じ日を営業日とする場合の記載例です。
この他、契約書における営業日の定義や書き方・規定のしかたにつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
「直ちに」「遅滞なく」「速やかに」は使わない
なお、検査期間・検査期限を具体的な数字ではなく「直ちに」「遅滞なく」「速やかに」という表現で規定することがあります。
【契約条項の書き方・記載例・具体例】検査に関する条項
第○条(検査)
受託者からの本件製品の納入があった場合、委託者は、速やかに納入があった本件製品の検査を実施するものとする。
(※便宜上、表現は簡略化しています)
このようなあいまいな用語では、検査のスケジュールが確定しないため、オススメできません。
これらの「直ちに」「遅滞なく」「速やかに」という表現は、法律用語ではあるものの、具体的な数字としての定義はありません。
このため、できるだけ数字でわかるように、検査期間・検査期限は日数で明記します。
ポイント
- 検査期間・検査期限は、「委託者が検査しない」リスクを抑止できる。
- 検査期間・検査期限は、必ず具体的な数字で決める。
- 検査期間・検査期限は、「納入があった日」から起算する。
- 検査期間・検査期限の設定の際、「直ちに」「遅滞なく」「速やかに」というようなあいまいな表現は使わない。
業務委託契約では検査期間・検査期限の満了・経過の効果も規定する
検査期間内・検査期限内に検査が終了しない場合について規定する
なお、検査期間・検査期限は、単に設定するだけでは意味がありません。
検査期間・検査期限の条項では、検査期間・検査期限を過ぎても検査がされない場合はどうなるのか、という効果を規定します。
具体的には、検査期間の満了や検査期限の経過後、その検査が自動的に合格となるか、または自動的に不合格となるように、規定します。
特に、受託者の立場としては、検査期間内・検査期限内に検査がおこなわれない、または終わらない場合は、自動的に合格したものとみなすこととします。
こうすることで、委託者が検査を怠った場合でも、自動的に検査に合格しますので、特に問題とはなりません。
「検査期間・検査期限の経過=自動合格」とする場合の委託者の注意点
逆に、委託者の立場としては、こうした「検査期間の満了・検査期限の経過=自動合格」という検査期間の条項が設定された場合は、注意が必要です。
このような条項は、次のような場合でも、納入された物品・製品・成果物や、実施された委託業務が検査に合格したものとみなされてしまいます。
検査がおこなわれない具体例
- 繁忙期で人員が足りない場合
- 会社が長期休暇に入った場合
- 現場が「うっかりして」検査を忘れた場合
このため、検査期間・検査期限の経過=自動合格とはせずに、可能であれば、検査期間・検査期限の経過=自動不合格とします。
もっとも、これでは受託者が納得しないでしょう。
このため、検査期間・検査期限を長めに設定する、検査期間を延長できる手続を規定する、というような対応も検討するべきです。
ポイント
- 検査期間・検査期限だけでなく、検査期間内・検査期限内に検査が終了しない場合についても規定する。
- 検査期間内・検査期限内に検査が終了しない場合は、その検査は、自動合格または自動不合格とする。
- 受託者の立場の場合は、自動合格とする。
- 委託者の立場の場合は、自動不合格とするか、または、長期間の検査期間・検査期限とする、検査期間・検査期限の延長ができるようにする等の対策をする。
注文者(委託者)は取適法(旧下請法)・フリーランス保護法に注意
取適法における4条明示(旧3条書面)規制とは?
取適法とは?
取適法が適用される業務委託契約の場合、業務内容は、いわゆる4条明示の必須記載事項です。
取適法は、正式名称を「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」といい、委託者=委託事業者(旧親事業者)を規制し、受託者=中小受託事業者(旧下請事業者)を強力に保護している法律です。
【意味・定義】取適法とは?
取適法とは、正式には「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」といい、委託事業者(旧親事業者)に対し義務・禁止行為を課すことにより、委託事業者の中小受託事業者(旧下請事業者)に対する取引を公正にするとともに、中小受託事業者の利益を保護することを目的とした法律をいう。いわゆる「下請法」が改正されたもの。
業務委託契約では、委託者と受託者の資本金の金額や従業員の人数と業務内容によっては、取適法が適用される可能性があります。
具体的には、以下の6パターンのうちのいずれかに該当する場合は、取適法が適用されます。
パターン1 | |||
|---|---|---|---|
| 委託者 | 受託者 | ||
| 資本金の区分 | 3億1円以上の法人 | 3億円以下の法人(または個人事業者) | |
| 業務内容 |
| ||
パターン2 | |||
|---|---|---|---|
| 委託者 | 受託者 | ||
| 資本金の区分 | 1千万1円以上3億円以下の法人 | 1千万円以下の法人(または個人事業者) | |
| 業務内容 |
| ||
パターン3 | |||
|---|---|---|---|
| 委託者 | 受託者 | ||
| 従業員の区分 | 従業員300人超の法人 | 従業員300人以下の法人または個人事業者 | |
| 業務内容 |
| ||
パターン4 | |||
|---|---|---|---|
| 委託者 | 受託者 | ||
| 資本金の区分 | 5千万1円以上の法人 | 5千万円以下の法人(または個人事業者) | |
| 業務内容 |
| ||
パターン5 | ||
|---|---|---|
| 委託者 | 受託者 | |
| 資本金の区分 | 1千万1円以上5千万円以下の法人 | 1千万円以下の法人(または個人事業者) |
| 業務内容 |
| |
パターン6 | ||
|---|---|---|
| 委託者 | 受託者 | |
| 従業員の区分 | 従業員100人超の法人 | 従業員100人以下の法人または個人事業者 |
| 業務内容 |
| |
この他、業務委託契約に取適法が適用されるかどうかにつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
取適法の4条明示とは?
取適法が適用される場合、委託者=委託事業者は、取適法第4条にもとづき、受託者=中小受託事業者に対して、取引の条件を明示しなければなりません。
この書面のことを、「4条明示」といいます。これは、旧下請法では3条書面と呼ばれていたものです。
【意味・定義】4条明示(取適法)とは?
4条明示(取適法)とは、製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)第4条に規定された、委託事業者(旧親事業者)が中小受託事業者(旧下請事業者)に対し明示しなければならない事項(取引条件)をいう。旧下請法のいわゆる「3条書面」に代わるもの。
4条明示では検査完了日が必須記載事項
4条明示では、委託者が物品・製品・役務の検査をする場合は、「検査を完了する期日」が必須記載事項となっています。
4条明示の必須記載事項
- 委託事業者及び中小受託事業者の名称(番号、記号等による明示も可)
- 製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託又は特定運送委託をした日
- 中小受託事業者の給付の内容(役務提供委託又は特定運送委託の場合は、提供される役務の内容)
- 中小受託事業者の給付を受領する期日(役務提供委託又は特定運送委託の場合は、その委託に係る役務の提供を受ける期日又は期間)
- 中小受託事業者の給付を受領する場所(役務提供委託又は特定運送委託の場合は、その委託に係る役務の提供を受ける場所)
- 中小受託事業者の給付の内容(役務提供委託又は特定運送委託の場合は、提供される役務の内容)について検査をする場合は、その検査を完了する期日
- 代金の額
- 代金の支払期日
- 代金の全部又は一部の支払につき、一括決済方式で支払う場合は、金融機関名、貸付け又は支払を受けることができることとする額(支払額に占める一括決済方式による割合でも可)及びその期間の始期、委託事業者が代金債権相当額又は代金債務相当額を金融機関へ支払う期日(決済日)
- 代金の全部又は一部の支払につき、電子記録債権で支払う場合は、電子記録債権の額(支払額に占める電子記録債権による割合でも可)及び中小受託事業者が代金の支払を受けることができることとする期間の始期、電子記録債権の満期日
- 原材料等を有償支給する場合は、その品名、数量、対価、引渡しの期日、決済期日及び決済方法
- 上記1.~12.の事項のうち、その内容が定められないことについて正当な理由があり記載しない事項(未定事項)がある場合は、当該未定事項の内容が定められない理由、当該未定事項の内容を定めることとなる予定期日
引用元:中小受託取引適正化法テキストp.37
このため、この「検査を完了する期日」が4条明示において明示されていないと、取適法第4条(旧下請法第3条)違反となります。
フリーランス保護法における4条明示規制とは?
フリーランス保護法とは?
取適法と同様の規制として、フリーランス保護法による規制があります。
フリーランス保護法が適用される業務委託契約の場合、業務内容は、いわゆる3条通知の必須記載事項です。
フリーランス保護法は、正式名称を「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」といい、委託者=業務委託事業者を規制し、受託者=特定受託事業者を協力に保護している法律です。
【意味・定義】フリーランス保護法(フリーランス新法)とは?
フリーランス保護法・フリーランス新法とは、正式には「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(別名:フリーランス・事業者間取引適正化等法)といい、フリーランスに係る取引の適正化、就業環境の整備等を図る法律をいう。
業務委託契約では、受託者が個人事業者か一人法人の場合、フリーランス保護法が適用される可能性があります。
具体的なフリーランス保護法が適用される具体的な条件は、以下のとおりです。
フリーランス保護法第3条が適用される条件
- 発注事業者が事業者であること(業種、規模、従業者の有無を問わない)。
- 受注事業者(フリーランス)が個人事業者または一人法人(役員が1人だけの法人)であり、かつ、いずれも従業員を使用しないものであること。
- 業務委託の内容が物品の製造・加工、情報成果物の作成、役務の提供(物品の修理を含み、発注事業者自らに役務の提供をさせることを含む)であること。
フリーランス保護法第3条が適用される条件のポイント
- 発注事業者としては、すべての事業者が対象となる。
- フリーランスは、個人事業者だけでなく役員が代表取締役だけの一人法人も対象となる。ただし、従業員を1人でも使用する場合は対象外となる。
- 従業員とは、「1週間の所定労働時間が20時間以上であり、かつ、継続して31日以上雇用されることが見込まれる労働者」(派遣労働者を含む)のこと。
- 従業員には同居家族は含まれない。
- 取適法(旧下請法)とは異なり、役務の提供には建設工事も含まれる。
- 取適法(旧下請法)とは異なり、再委託のもののみならず、発注事業者が「その事業のために」委託するものや、「(発注事業者)自らに役務の提供をさせることを含む」。
この他、フリーランス保護法が用されるかどうかにつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
フリーランス保護法の3条通知とは?
フリーランス保護法が適用される場合、委託者=業務委託事業者は、フリーランス保護法第3条にもとづき、受託者=特定受託事業者に対し、取引の条件を通知しなければなりません。
この書面のことを、「3条通知」といいます。
【意味・定義】3条通知(フリーランス保護法)とは?
3条通知とは、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス保護法)第3条に規定された、業務委託事業者(発注事業者)が特定受託事業者(フリーランス)に対し明示しなければならない通知(取引条件)をいう。
3条通知では検査完了日が必須記載事項
3条通知では、委託者が物品・製品・役務の検査をする場合は、「検査を完了する期日」が必須記載事項となっています。
3条通知の必須明示事項
- 業務委託事業者および特定受託事業者の商号、氏名もしくは名称または事業者別に付された番号、記号その他の符号であって業務委託事業者および特定受託事業者を識別できるもの(施行規則第1条第1項第1号)
- 業務委託をした日(施行規則第1条第1項第2号)
- 特定受託事業者の給付の内容(施行規則第1条第1項第3号)
- 特定受託事業者の給付を受領し、または役務の提供を受ける期日等(施行規則第1条第1項第4号)
- 特定受託事業者の給付を受領し、または役務の提供を受ける場所(施行規則第1条第1項第5号)
- 特定受託事業者の給付の内容について検査をする場合は、その検査を完了する期日(施行規則第1条第1項第6号)
- 報酬の額(施行規則第1条第1項第7号)
- 報酬の支払期日(施行規則第1条第1項第7号および同条第3項)
- 報酬の全部または一部の支払につき手形を交付する場合は、その手形の金額および満期(施行規則第1条第1項第8号)
- 報酬の全部または一部の支払につき一括決済方式(債権譲渡担保方式またはファクタリング方式もしくは併存的債務引受方式)により金融機関から当該報酬の額に相当する金銭の賃付けまたは支払を受けることができることとする場合は、当該金融機関の名称、当該金融機関から貸付けまたは支払を受けることができることとする額、および当該報酬債権または当該報酬債務の額に相当する金銭を当該金融機関に支払う期日(施行規則第1条第1項第9号)
- 報酬の全部または一部の支払につき、業務委託事業者および特定受託事業者が電子記録債権の発生記録をし、または譲渡記録をする場合は、当該電子記録債権の額および当該電子記録債権の支払期日(施行規則第1条第1項第10号)
- 報酬の全部または一部の支払につき、業務委託事業者が、資金決済に関する法律第36条の2第1項に規定する第一種資金移動業を営む同法第2条第3項に規定する資金移動業者(以下、単に「資金移動業者」という。)の第一種資金移動業に係る口座、同法第36条の2第2項に規定する第二種資金移動業を営む資金移動業者の第二種資金移動業に係る口座または同条第3項に規定する第三種資金移動業を営む資金移動業者の第三種資金移動業に係るロ座への資金移動を行う場合は、当該資金移動業者の名称および当該資金移動に係る額(施行規則第1条第1項第11号)
このため、この「検査を完了する期日」が3条通知において明示されていないと、フリーランス保護法第3条違反となります。
取引条件の不明示=取適法第4条違反・フリーランス保護法第3条は最大50万円の罰金
なお、委託者が受託者に対し、4条明示や3条通知をしない場合は、50万円以下の罰金が科されます。
ただし、取適法では、4条明示の不明示は、直ちに罰金が科されるのに対し、フリーランス保護法では、3条通知の不明示は、行政指導、勧告、命令があり、その命令に違反した場合に、罰金が科されます。
ポイントは、委託事業者である法人だけに罰金が科されるのではなく、その違反行為をした委託事業者の代表者、代理人、使用人その他の従業者にも罰金が科される、ということです。
つまり、会社で50万円を払えばいい、というものではないのです。しかも、50万円とはいえ、いわゆる「前科」がつきます。
なお、委託者である法人にも、罰金は科されます。
ポイント
- 取適法が適用される業務委託契約の場合、「検査を完了する期日」は、4条明示の必須記載事項。
- 同様に、フリーランス保護法が適用される業務委託契約の場合も、「検査を完了する期日」は、3条通知の必須記載事項。
業務委託契約では合格・不合格の場合の対応を規定する
検査合格の場合は業務終了
検査済証(合格証書)の発行手続き
検査の結果、納入された物品・製品・成果物や実施された委託業務が合格であった場合は、その時点で業務は、終了します。
一般的な業務委託契約では、検査の合格の場合、委託者が、受託者に対し、何らかの方法で通知し、かつ、検査済証(合格証書)を発行するように規定します。
なお、民法第486条を根拠に、受託者は、委託者に対し、検査済証(合格証書)の交付を請求することができます。
民法第486条(受領証書の交付請求)
弁済をした者は、弁済を受領した者に対して受取証書の交付を請求することができる。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
このため、委託者は、業務委託契約に検査済証(合格証書)の交付の規定がないことを理由に、検査済証(合格証書)の交付を拒否できません。
検査合格日は瑕疵担保期間の起算点となる重要な日付
この検査済証(合格証書)には、必ず検査に合格した日=検査合格日を規定します。
この検査合格日は、特に請負型の業務委託契約では、非常に重要な日付です。
というのも、検査合格日は、いわゆる「契約不適合責任」の期間の起算点となることが多いです。
【意味・定義】請負契約における契約不適合責任とは?
請負契約における契約不適合責任とは、仕事の種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しない場合(契約不適合があった場合。瑕疵、ミス、欠陥等があった場合を含む。)において、注文者から請求された、履行の追完、報酬の減額、損害賠償、契約の解除の請求に応じる請負人の責任・義務をいう。
このため、請負型の業務委託契約における受託者の立場の場合、必ず検査済証(合格証書)を受取るようにしてください。
不合格の種類に応じて対処を規定する
検査が不合格となった場合は、合格となるまで、どのような対処をするのかが重要となります。
このため、業務委託契約の検査の条項では、検査の不合格の種類に応じて、対処を規定します。
一般的な業務委託契約であれば、一定の期間を定めたうえで、受託者が、業務のやり直しをしたうえで、再検査がおこなわれます。
また、製造請負契約の場合は、次の3種類の不合格の種類に応じて、それぞれ対処を規定します。
検査の不合格の種類
- 仕様不適合または誤納(別の物品・製品の納入):やり直しまたは正規品の納入
- 数量不足:追加納入
- 数量過剰:受託者の費用負担での引取りまたは委託者による買取り
いずれにせよ、業務が合格するまで、やり直しと再検査を繰り返すことになります。
なお、やり直しに関しては、取適法やフリーランス保護法での規制があります。
このため、特に委託者の側は、取適法違反やフリーランス保護法違反に注意する必要があります(後で詳しく触れます)。
場合によっては不合格時の特別採用を規定する
【意味・定義】特別採用・特採とは?
なお、特に製造請負契約の場合、検査の結果が不合格であったとしても、その原因が軽微な瑕疵・欠陥であり、本来の契約の目的を果たせるときは、値引きをしたうえで、委託者が不合格となった物品・製品・成果物を引取る場合があります。
これを、特別採用といい、省略して、「特採」ともいいます。
【意味・定義】特別採用(特採)とは?
特別採用とは、製造請負契約において、製造された物品・製品に瑕疵・欠陥があった場合において、その瑕疵・欠陥が軽微なものであり、契約の目的の達成に支障がないときに、委託者が、値引きしたうえで、これを引取ることをいう。略して「特採」(読み方:とくさい)ともいう。
特別採用を申出ることができる権利者を決めておく
一般的な製造請負契約では、特別採用は、委託者の側だけが申出ることができます。
ただ、場合によっては、受託者の側から申出ることができるように規定することもあります。
受託者の側としてみれば、軽微とはいえ、瑕疵・欠陥がある物品・製品を納入するのですから、なんとなく後ろめたい気持ちがあるとは思います。
しかしながら、多少の値引きがあるにしても、引取ってもらたったほうが、やり直しをするよりも安上がりな場合も多いです。
このため、委託者との契約交渉の成り行きによっては、受託者の側からも特別採用を申出ることができるように検討するべきです。
もちろん、いずれの場合も、両者の合意がなければ、特別採用は成立しません。
特別採用の原因となった契約不適合責任・瑕疵・欠陥にもとづく責任を明記しておく
なお、特別採用を規定する場合は、その原因となった契約不適合責任・瑕疵・欠陥にもとづいて、何らかの損害が発生した場合、委託者と受託者のどちらがその責任を負うのかを明記します。
というのも、この瑕疵・欠陥にもとづく責任について、何も明記していない場合は、次のとおり、立場によって主張が対立します。
特別採用にもとづく損害の責任の主張
- 委託者:物品・製品の契約不適合責任・瑕疵・欠陥にもとづく責任は、あくまその製造業者である受託者が負担するべき。
- 受託者:そもそも物品・製品に瑕疵・欠陥があることを承知のうえ、値引きまでして引取った以上、その契約不適合責任・瑕疵・欠陥の責任は委託者が負担するべき。
このような主張の対立がないように、特別採用を規定する場合は、その原因となった瑕疵・欠陥にもとづく責任についても、明記するべきです。
ポイント
- 検査結果が合格の場合は、業務は終了する。ただし、受託者の立場の場合は、それだけで終わらせずに、委託者に対し、必ず検査合格日が記載された検査済証(合格証書)の交付を請求する。
- 検査合格日は、瑕疵担保期間の起算点となる重要な日付。
- 検査結果が不合格の場合、受託者は、一定期間内に業務のやり直しをしなければならない。その後は、合格するまで再検査とやり直しの繰り返し。
- 製造請負契約において、軽微な欠陥がある場合は、委託者が値引きして引き取る(=特別採用)こともある。
- 特別採用を申出ることができる権利者を決めておく。
- 特別採用の原因となった瑕疵・欠陥によって、なんらかの損害が発生した場合、委託者・受託者のどちらがその損害を負担するのか、明記しておく。
委託者は検査の際の取適法違反・フリーランス保護法に要注意
取適法・フリーランス保護法は検査に規制をかけている
取適法が適用される業務委託契約の場合、委託者による検査について、一定の規制があります。
また、フリーランス保護法においても、ほとんど同様の規制があります。
具体的には、「恣意的な検査」について、規制が課されます。
このため、取適法やフリーランス保護法が適用される業務委託契約では、特に注意が必要です。
「恣意的」な検査は取適法・フリーランス保護法違反
取適法やフリーランス保護法が適用される業務委託契約の場合、恣意的な検査は、具体的には、次の禁止行為に該当します。
「恣意的」な検査による禁止行為(取適法)
- 受領拒否(取適法第5条第1項第1号)
- 返品(同第5条第1項第4号)
- 不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(同第5条第2項第3号)
「恣意的」な検査による禁止行為(フリーランス保護法)
- 受領拒否(フリーランス保護法第5条第1項第1号)
- 返品(同第5条第1項第3号)
- 不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(同第5条第2項第2号)
以下、それぞれ具体的に見てみましょう。
恣意的な検査による受領拒否
取適法やフリーランス保護法では、恣意的に厳しい検査基準を設定して、製品・成果物の受領を拒むことは、次のとおり受領拒否(取適法第5条第1項第1号・フリーランス保護法第5条第1項第1号)に該当し、認められません。
(イ)検査基準を恣意的に厳しくして、委託内容と異なるなどとする場合
引用元: 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準第4 1(2)(イ)
・ 業務委託後に検査基準を恣意的に厳しくすることにより、委託内容と適合しないとして、従来の検査基準であれば合格とされたものを不合格とする場合
引用元: 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準第2部 第2 2(2)ア(ウ)①
このため、委託事業者・業務委託事業者としては、検査基準が恣意的にならないよう、一義的・客観的なものとする必要があります。
恣意的な検査にもとづく返品
取適法やフリーランス保護法では、恣意的に厳しい検査基準を設定して、納入された製品・成果物を引き取らせることは、次のとおり返品(取適法第5条第1項第4号・フリーランス保護法第5条第1項第3号)に該当し、認められません。
イ 検査基準を恣意的に厳しくして、委託内容と異なるなどとする場合
引用元: 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準第4 4(2)イ
② 業務委託後に検査基準を恣意的に厳しくすることにより、委託内容と適合しないとして、従来の検査基準で合格とされたものを不合格とする場合
引用元: 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準第2部 第2 2(2)ウ(ア)②
このため、委託事業者や業務委託事業者としては、恣意的な検査にならないよう、一貫した検査基準で検査する必要があります。
恣意的な検査にもとづくやり直し
取適法やフリーランス保護法では、恣意的に厳しい検査基準を設定して、業務内容の変更や、実施された業務・納入された製品・成果物のやり直しを要請することは、次のとおり不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(取適法第5条第2項第3号・フリーランス保護法第5条第2項第2号)に該当し、認められません。
ウ 検査基準を恣意的に厳しくして委託内容と異なること等があるとする場合
引用元: 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準第4 8(3)ウ
③ 業務委託後に検査基準を恣意的に厳しくし、給付の内容が委託内容と適合しないとする場合
引用元: 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準第2部 第2 2(2)キ(オ)③
このため、委託事業者・業務委託事業者としては、適法なやり直しを要求できるように、明確な業務内容と検査基準の規定をする必要があります。
禁止行為をおこなった場合は勧告がある
委託事業者や業務委託事業者がこれらの禁止行為の規定に違反した場合、ただちに罰則とはなりません。
通常は、委託事業者や業務委託事業者に対し、公正取引委員会または中小企業庁から調査が入ります(この調査を拒むと50万円以下の罰金が科されます)。
この調査の結果、違反の程度が軽い場合は行政指導や助言で済みますが、違反の程度が重い場合は公正取引委員会から勧告を受けます。
勧告を受けると、企業名が公表されますので、社会的な制裁を受けることになります。
なお、勧告に従わない場合は、独占禁止法にもとづき、より重い行政処分である排除措置命令や課徴金納付命令が出されます。
もちろん、これに従わない場合は、最終的には刑事罰を受けることになります。
ポイント
- 恣意的な検査は、取適法・フリーランス保護法で禁止された「受領拒否」「返品」「不当な給付内容の変更及び不当なやり直し」の原因となる。
- 禁止行為をおこなった場合は、直ちに罰則を受けるわけでなく、勧告(+企業名の公表)や行政指導を受ける。
- ただし、勧告や行政指導を受けた後に、取適法・フリーランス保護法に適合するように改善しなければ、排除措置命令・課徴金納付命令の行政処分を受け、最終的には刑事罰が科される。
業務委託契約における検査期間・検査期限に関するよくある質問
- 業務委託契約における検査期間・検査期限とは何ですか?
- 検査期間・検査期限とは、委託者が受託者から納入・提供を受けた物品・成果物・業務等について、検査をしなければいけない期間や期限のことです。
- 検査期間・検査期限の条項では、日数以外にどのようなものを規定しますか?
- 検査期間・検査期限の条項では、日数以外には、検査が終わらずに検査期間・検査期限を経過した場合の効果も決めておきます。
具体的には、自動的に検査合格となるか、または検査不合格となる、とすることがあります。
このほか、検査期間・検査期限を延長する手続きを規定する場合もあります。


