- 印紙(印紙税・収入印紙)の1号文書と2号文書の違いは何ですか?
- 印紙税法の1号文書と2号文書は、印紙税法で明確に定義づけられていて、まったく別物の文書です。1号文書と2号文書の違いは、対象となる契約書が異なる点です。
このページでは、主に業務委託契約の委託者・受託者の双方向けに、1号文書と2号文書の違いについて解説しています。
1号文書は、様々な権利・物品の設定、譲渡、消費貸借、運送に関するもの等の契約書が該当します。
業務委託契約書では、これらの中でも、特に財産権(主に著作権)の譲渡が重要となってきます。
これに対し、2号文書は、請負に関する契約書のみが該当します。
業務委託契約書では、契約形態が請負契約である場合が重要となってきます。
このように、一部の契約書(運送請負契約)を除いて、1号文書と2号文書は全く別物です。
このページでは、こうした1号文書と2号文書の違いについて、開業20年・400社以上の取引実績がある管理人が、わかりやすく解説していきます。
このページでわかること
- 1号文書と2号文書の違い
- 1号文書かつ2号文書の印紙(印紙税・収入印紙)の金額・計算
1号文書と2号文書の違いは?
印紙税法上の1号文書と2号文書の違いは、対象となる契約書が異なる点です。
1号文書と2号文書の違い
1号文書と2号文書は、それぞれ次の契約書を対象とする点で異なる。
- 1号文書:1.不動産、鉱業権、無体財産権、船舶若しくは航空機又は営業の譲渡に関する契約書、2.地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書、3.消費貸借に関する契約書、4.運送に関する契約書(傭よう船契約書を含む。)―の4種類の契約書
- 2号文書:請負に関する契約書
以下、それぞれの文書について、詳しく見ていきましょう。
1号文書と印紙(印紙税・収入印紙)の金額は?
1号文書とは?
1号文書とは、次の契約書のことです。
【意味・定義】1号文書(印紙税法)とは?
印紙税法における1号文書とは、以下のいずれかの契約書をいう。
- 不動産、鉱業権、無体財産権、船舶若しくは航空機又は営業の譲渡に関する契約書
- 地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書
- 消費貸借に関する契約書
- 運送に関する契約書(傭よう船契約書を含む。)
業務委託契約では、主に無体財産権(特に著作権)の譲渡がある業務委託契約書が該当します。
また、運送業界の場合は、運送に関する契約書も2号文書に該当します。
なお、運送請負契約書は、「請負に関する契約書」であっても、1号文書に該当します。
1号文書の印紙(印紙税・収入印紙)の金額は?
1号文書の印紙(印紙税・収入印紙)の金額は、以下のとおりです。
1号文書の印紙税の金額 | |
---|---|
記載された契約金額 | 印紙税額(1通又は1冊につき) |
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上10万円以下 | 200円 |
10万円を超え50万円以下 | 400円 |
50万円を超え100万円以下 | 1千円 |
100万円を超え500万円以下 | 2千円 |
500万円を超え1千万円以下 | 1万円 |
1千万円を超え5千万円以下 | 2万円 |
5千万円を超え1億円以下 | 6万円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 |
5億円を超え10億円以下 | 20万円 |
10億円を超え50億円以下 | 40万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
2号文書と印紙(印紙税・収入印紙)の金額は?
2号文書とは?
2号文書とは、「請負に関する契約書」のことです。
【意味・定義】2号文書(印紙税法)とは?
印紙税法における2号文書とは、請負に関する契約書であって、「職業野球の選手、映画の俳優その他これらに類する者で政令で定めるものの役務の提供を約することを内容とする契約を含むもの」をいう。
なお、ここでいう「職業野球の選手、映画の俳優その他これらに類する者で政令で定めるものの役務の提供を約することを内容とする契約」は、次のとおりです。
印紙税法施行令第21条(その役務の提供を約することを内容とする契約が請負となる者の範囲)
1 法別表第1第2号の定義の欄に規定する政令で定める者は、次に掲げる者とする。
(1)プロボクサー
(2)プロレスラー
(3)演劇の俳優
(4)音楽家
(5)舞踊家
(6)映画又は演劇の監督、演出家又はプロジューサー
(7)テレビジョン放送の演技者、演出家又はプロジューサー
2 法別表第1第2号の定義の欄に規定する契約は、職業野球の選手、映画の俳優又は前項に掲げる者のこれらの者としての役務の提供を約することを内容とする契約に限るものとする。
つまり、一般的な請負契約に加えて、印紙税法施行令第21条に規定する職業の方々がその職業としての役務を提供する契約が2号文書に該当します。
業務委託契約では、主に契約形態が請負契約である業務委託契約書が該当します。
ただし、すでに述べたとおり、運送請負契約書は、「請負に関する契約書」であっても、1号文書に該当します。
また、芸能関係の契約や、YouTuberのような動画配信事業に関する契約の場合は、上記の印紙税法施行令第21条により、契約形態に関係なく、2号文書に該当する可能性があります。
2号文書の印紙(印紙税・収入印紙)の金額(原則)は?
2号文書の金額は、原則として(=不動産譲渡契約書・建設工事請負契約書以外)は、以下のとおりです。
2号文書の印紙税の金額(不動産譲渡契約書・建設工事請負契約書を除く) | |
---|---|
記載された契約金額 | 印紙税額(1通又は1冊につき) |
1万円未満(※) | 非課税 ※ 第2号文書と第3号文書から第17号文書とに該当する文書で第2号文書に所属が決定されるものは、記載された契約金額が1万円未満であっても非課税文書となりません。 |
100万円以下 | 200円 |
100万円を超え200万円以下 | 400円 |
200万円を超え300万円以下 | 1千円 |
300万円を超え500万円以下 | 2千円 |
500万円を超え1千万円以下 | 1万円 |
1千万円を超え5千万円以下 | 2万円 |
5千万円を超え1億円以下 | 6万円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 |
5億円を超え10億円以下 | 20万円 |
10億円を超え50億円以下 | 40万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
2号文書の印紙(印紙税・収入印紙)の金額(不動産譲渡契約書・建設工事請負契約書)は?
例外として、不動産譲渡契約書・建設工事請負契約書の印紙(印紙税・収入印紙)の金額は、以下のとおりです。
2号文書の印紙税の金額(不動産譲渡契約・建設工事請負契約書) | ||
---|---|---|
記載された契約金額 | 印紙税額(1通又は1冊につき) | |
不動産譲渡契約書 | 建設工事請負契約 | |
1万円未満 | 非課税 | |
10万円以下 | 100万円以下 | 200円 |
10万円を超え50万円以下 | 100万円を超え200万円以下 | 200円 |
50万円を超え100万円以下 | 200万円を超え300万円以下 | 500円 |
100万円を超え500万円以下 | 300万円を超え500万円以下 | 1千円 |
500万円を超え1千万円以下 | 5千円 | |
1千万円を超え5千万円以下 | 1万円 | |
5千万円を超え1億円以下 | 3万円 | |
1億円を超え5億円以下 | 5万円 | |
5億円を超え10億円以下 | 16万円 | |
10億円を超え50億円以下 | 32万円 | |
50億円を超えるもの | 48万円 |
1号文書かつ2号文書の印紙(印紙税・収入印紙)の計算・金額は?
著作権の譲渡が伴う請負契約型の業務委託契約書は1号文書かつ2号文書
このように、一般的な業務委託契約では、1号文書は、著作権の譲渡に関する業務委託契約書が該当します。
また、同様に、2号文書は、契約形態が請負契約である業務委託契約書が該当します。
ということは、著作物の作成に関する請負契約型の業務委託契約書は、1号文書かつ2号文書となる可能性があります。
具体的には、以下のような契約書が、1号文書かつ2号文書に該当します。
1号文書かつ2号文書である契約書の具体例
- ソフトウェア・プログラム・システム・アプリ開発業務請負契約書
- グラフィックデザイン作成請負契約書
- ライティング業務請負契約書
- ホームページ作成請負契約書
1号文書かつ2号文書の印紙(印紙税・収入印紙)の金額・計算は?
1号文書かつ2号文書の場合、課税物件表の適用に関する通則3ロにより、次のように扱います。
1号文書かつ2号文書の場合の収入印紙
- 原則:1号文書
- ただし、それぞれの課税事項ごとの契約金額を区分することができ、かつ、2号文書についての契約金額が1号文書についての契約金額を超えるもの:2号文書
課税物件表の適用に関する通則
(途中省略)
ロ 第一号に掲げる文書と第二号に掲げる文書とに該当する文書は、第一号に掲げる文書とする。ただし、当該文書に契約金額の記載があり、かつ、当該契約金額を第一号及び第二号に掲げる文書のそれぞれにより証されるべき事項ごとに区分することができる場合において、第一号に掲げる文書により証されるべき事項に係る金額として記載されている契約金額(当該金額が二以上ある場合には、その合計額。以下このロにおいて同じ。)が第二号に掲げる文書により証されるべき事項に係る金額として記載されている契約金額に満たないときは、同号に掲げる文書とする。
引用元:印紙税法 | e-Gov法令検索
このように、請負契約書が1号文書と2号文書に該当する場合は、原則として、1号文書となります。
例外として、知的財産権の譲渡の対価と、請負の契約金額を別々に区別できるように記載していて、その金額が、請負の契約金額の方が多い場合に限り、2号文書として扱われます。
この他、1号文書かつ2号文書の印紙(印紙税・収入印紙)の具体的な金額・計算につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
1号文書と2号文書の違い
- 印紙(印紙税・収入印紙)の1号文書と2号文書の違いは何ですか?
- 印紙税法の1号文書と2号文書は、印紙税法で明確に定義づけられていて、まったく別物の文書です。1号文書と2号文書の違いは、対象となる契約書が異なる点です。
- 1号文書かつ2号文書の契約書はどちらに該当するのでしょうか?
- 1号文書かつ2号文書の契約書は、原則として1号文書に該当します。
ただし、例外として、「請負契約の報酬>無体財産権の譲渡の対価」の場合は2号文書となります。