建設工事と業務委託の違いは何ですか?
建設工事とは、建築や土木の工事(特に請負契約によるもの)を意味します。これに対し、一般的に、業務委託は、何らかの(建設工事・建設業務を含む)業務の委託を意味します。
また、建設工事と業務委託の違いは、建設工事は、通常は建築や土木の工事の請負を意味するのに対し、業務委託は、建設工事や建設業務を含む、あらゆる業務の委託(請負のみならず準委任も含む)を意味する、という点です。

このページでは、建設工事や業務委託の定義と、その違いについて解説しています。

建設工事は、建築や土木の工事に関する(通常は)請負契約のことです。

これに対し、業務委託は、一般的に、事業活動(建設工事・建設業務も含みます)の一部または全部を委託する行為です。

このため、建設工事と業務委託の関係は、業務委託には建設工事が含まれる場合がある、ということになります。

このページでは、こうした建設工事と業務委託の定義・違い・関係について、開業20年・400社以上の取引実績がある管理人が、わかりやすく解説していきます。

このページでわかること
  • 建設工事の定義
  • 業務委託の定義
  • 建設工事と業務委託の違い
  • 建設業務の業務委託の具体例




建設工事と業務委託の違いは?

建設工事=土木建築の請負契約

建設工事は、「土木建築に関する工事」を意味します。

特に、契約実務においては、建設業法に規定する工事に該当するかどうかが重要となります。

【意味・定義】建設工事とは?

建設工事とは、土木建築に関する工事のうち、建設業法別表第一の上欄に掲げるものをいう。

建設工事建設業
土木一式工事土木工事業
建築一式工事建築工事業
大工工事大工工事業
左官工事左官工事業
とび・土工・コンクリート工事とび・土工工事業
石工事石工事業
屋根工事屋根工事業
電気工事電気工事業
管工事管工事業
タイル・れんが・ブロツク工事タイル・れんが・ブロツク工事業
鋼構造物工事鋼構造物工事業
鉄筋工事鉄筋工事業
舗装工事舗装工事業
しゆんせつ工事しゆんせつ工事業
板金工事板金工事業
ガラス工事ガラス工事業
塗装工事塗装工事業
防水工事防水工事業
内装仕上工事内装仕上工事業
機械器具設置工事機械器具設置工事業
熱絶縁工事熱絶縁工事業
電気通信工事電気通信工事業
造園工事造園工事業
さく井工事さく井工事業
建具工事建具工事業
水道施設工事水道施設工事業
消防施設工事消防施設工事業
清掃施設工事清掃施設工事業
解体工事解体工事業

なお、建設工事請負契約につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

【改正民法対応】建設工事請負契約とは?建設業法・雛形・約款・作成義務・印紙について解説

業務委託=(建設業務を含む)業務の一部または全部の委託

これに対し、建設業界における業務委託は「建築や土木の工事を含む業務についての、請負、準委任等による委託」を意味します。

【意味・定義】業務委託契約とは?

業務委託契約とは、企業間取引の一種で、ある事業者が、相手方の事業者に対して、自社の業務の一部または全部を委託し、相手方がこれを受託する契約をいう。

なお、建設工事には法律上の定義があるのに対し、業務委託契約には法律上の定義がありません。

業務委託契約書とは?書き方・注意点についてわかりやすく解説

ただし、「建設業務」については、「土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務」(労働者派遣法第4条第1項第2号)と定義づけられています。

建設工事と業務委託の違いはあってないようなもの

つまり、業務委託は非常に広い概念であり、法律の定義も無いうえ、建設工事についても曖昧な定義・使い方であることから、これらの厳密な違いは、あってないようなものです。

建設工事と業務委託の違いは?

建設工事と業務委託の違いは、建設工事が「建築や土木に関する工事」であるのに対し、業務委託は「建築・土木の工事業務を含めた業務の請負、準委任等の委託」である、という点。ただし、業務委託の意味は非常に広く、法律上の定義も無いため、違いはあってないようなもの。





建設工事に関する業務委託のパターンは?

このように、「業務委託」という言葉は、非常に曖昧であるため、いくつかのパターンがあります。

建設業界における業務委託は、一般的には、次のような意味で使われています。

建設工事・建設業務の業務委託のパターン
  • パターン1:通常の建設工事(請負)とまったく同じ意味で使われるパターン
  • パターン2:建設工事の一部の業務を他の企業に再委託(準委任)する場合(下請工事)に使われるパターン
  • パターン3:建設工事の一部の業務を一人親方に再委託(特に準委任)する場合(下請工事)に使われるパターン

それぞれ、特徴を見ていきましょう。





パターン1:業務委託=建設工事(請負)

1つめのパターンは、業務委託と建設工事請負契約がまったく同じ意味で使われている場合です。

つまり、業務委託の業務内容が建設工事の完成であり、かつ契約形態が請負契約である場合です。

一般的には、このような形で「業務委託」という用語を使うことはあまりありません。

ただ、再委託の場合に「下請負契約」や「下請工事」という表現を避けるために、あえて「業務委託」という使い方をすることはあります。

なお、この場合は、当然ながら、建設工事と業務委託の違いはありません。





パターン2:企業への再委託(準委任)

「建設工事」の業務を「準委任」する場合

2つめのパターンは、企業間取引の一環として、なんらかの建設工事に関する業務の一部を企業に再委託する場合です。

つまり、業務委託の業務内容が建設工事の作業であり、かつ契約形態が準委任契約である場合です。

例えば、元請けとなる建設業者が、外部の建設業者に工事現場における一部の作業を再委託する場合などが該当します。

このような場合は、「建設業務委託契約」や「建設工事業務委託契約」と表現します。

一般的に、建設業において「業務委託」と表現した場合、契約形態は、この準委任契約であること(少なくともそのように意図している)が多いです。

「建設工事の完成を目的として締結する契約」は請負契約扱い

ただし、建設業法第24条により、「委託その他いかなる名義をもつてするかを問わず、報酬を得て建設工事の完成を目的として締結する契約」は、建設工事請負契約とみなされます。

建設業法第24条(請負契約とみなす場合)

委託その他いかなる名義をもつてするかを問わず、報酬を得て建設工事の完成を目的として締結する契約は、建設工事の請負契約とみなして、この法律の規定を適用する。

このように、「建設工事の完成を目的」とした場合は、たとえ契約書のタイトルが「建設業務委託契約」や「建設工事業務委託契約」だったとしても、建設業法が適用されます。

偽装請負(労働者派遣法違反)のリスクが高い契約

なお、建設工事の一部の業務を準委任契約の契約形態で再委託する契約は、偽装請負(労働者派遣法違反)に該当するリスクが非常に高いです。

【意味・定義】偽装請負(労働者派遣法・労働者派遣契約)とは?

労働者派遣法・労働者派遣契約における偽装請負とは、実態は労働者派遣契約なのに、労働者派遣法等の法律の規制を免れる目的で、請負その他労働者派遣契約以外の名目で契約が締結され、労働者が派遣されている状態をいう。

偽装請負とは?判断基準・違法性・罰則・リスクとその対策は?

しかも、建設工事において労働者派遣契約とみなされた場合は、一般的な偽装請負とは異なり、禁止業務(労働者派遣法第4条第1項第2号)である「建設業務」で労働者派遣法をおこなったこととなります。

このため、建設業務での業務委託契約を締結する場合は、適法な内容の業務委託契約書を作成する必要があります。

業務委託契約書を作成する理由

準委任契約である建設業務委託契約は偽装請負(労働者派遣契約扱い=労働者派遣法違反)になる可能性が高いことから、適法な業務委託契約となるような内容の契約書が必要となるから。

それだけでなく、契約の履行にあたっても、細心の注意を払う必要があります。

この他、業務委託契約が偽造請負とみなされないチェックポイントにつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約が偽装請負(労働者派遣法違反)にならないチェックリスト【37号告示対応版】





パターン3:一人親方への再委託(準委任)

一人親方への再委託は通常は準委任・一部の小規模な工事は請負

3つめのパターンは、なんらかの建設工事に関する業務の一部をいわゆる「一人親方」(フリーランス・個人事業者)に委託する場合です。

これもパターン2同様、業務委託の業務内容が建設業務であり、かつ契約形態が準委任契約である場合(いわゆる「手間請け」)が多いです。

ただし、小規模な工事(木造住宅の建築等)の場合は、一人親方が相手の契約であっても、一部の建設工事の完成を目的とした契約=請負契約である場合もあります。

こちらは、パターン2と異なり、労働者派遣法違反となることはありません。

一人親方が相手方の契約は労働契約・雇用契約とみなされる可能性あり

ただし、適法な業務委託契約ではなく、労働契約・雇用契約とみなされ、労働基準法違反となる可能性があります。

個人事業者・フリーランスとの業務委託契約と雇用契約・労働契約の15の違い

このため、一人親方(フリーランス・個人事業者)と建設業務委託契約を締結する場合は、適法な内容の建設業務委託契約書を作成する必要があります。

業務委託契約書を作成する理由

一人親方(フリーランス・個人事業者)との建設業務委託契約は、偽装請負(雇用契約・労働契約扱い=労働基準法違反)になる可能性が高いことから、適法な業務委託契約となる内容の契約書が必要となるから。

それだけでなく、契約の履行にあたっても、細心の注意を払う必要があります。

この他、業務委託契約が雇用契約・労働契約とみなされないチェックポイントにつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

労働者性のチェックリスト―業務委託契約のフリーランスと労働者の判断基準





建設工事と業務委託の違いに関するよくある質問

建設工事と業務委託の違いは何ですか?
建設工事と業務委託の違いは、建設工事は、建築や土木の請負契約を意味するのに対し、業務委託は、建設工事や建設業務を含む、あらゆる業務の委託(請負のみならず準委任も含む)を意味する、という点です。
建設工事の業務委託には、どのようなパターンがありますか?
建設工事の業務委託には、主に次のパターンがあります。

  • パターン1:通常の建設工事(請負)とまったく同じ意味で使われるパターン
  • パターン2:建設工事の一部の業務を他の企業に再委託(準委任)する場合(下請工事)に使われるパターン
  • パターン3:建設工事の一部の業務を一人親方に再委託(特に準委任)する場合(下請工事)に使われるパターン