このページでは、業務委託契約書に貼る収入印紙と印紙税について、よくある誤解を紹介します。

業務委託契約書の印紙税の計算は非常に複雑でわかりづらいため、余分に印紙税を収めていたり、逆に、必要な収入印紙を貼っていない場合が多いです。

それだけ、印紙税の計算には、誤解が多いということです。

おそらく、本当に必要な分だけの収入印紙を貼り、印紙税を収めているほうが、少ないものと思われます。

このページでは、こういった業務委託契約書の作成の際にありがちな収入印紙・印紙税の誤解について、詳しく解説しています。

なお、業務委託契約書の印紙税・収入印紙につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約書の印紙(印紙税・収入印紙)の金額はいくら?




業務委託契約書にありがちな印紙税・収入印紙の誤解

業務委託契約書にありがちな印紙税・収入印紙の誤解一覧
  • 【誤解1】(準)委任契約書に収入印紙を貼っている
  • 【誤解2】注文書に収入印紙を貼っている
  • 【誤解3】とりあえず4,000円の収入印紙を貼っている
  • 【誤解4】とりあえず200円の収入印紙を貼っている
  • 【誤解5】知的財産権の譲渡があるのに1号文書に該当するという認識がない
  • 【誤解6】「成果物がある=請負契約書=2号文書・7号文書」と思っている
  • 【誤解7】契約書のコピー・写し・副本・謄本等には収入印紙を貼る必要がないと思っている





【誤解1】(準)委任契約書に収入印紙を貼っている

(準)委任契約書は、実は、原則として収入印紙を貼る必要はありません。

というのも、(準)委任契約書は、印紙税法において、課税物件が規定されている別表第1には規定がないからです。

ただし、「売買の委託」や「売買の業務」を継続して委託する(準)委任契約・(準)委任型の業務委託契約書は、7号文書に該当します。

このような契約内容の場合は、(契約書に報酬・料金・委託料の金額の記載がない場合は)4,000円の収入印紙を貼る必要があります。

この他、(準)委任型の業務委託契約書の収入印紙・印紙税額につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

(準)委任契約書の印紙(印紙税・収入印紙)の金額はいくら?

ポイント
  • (準)委任契約書は、原則として不課税文書であり、印紙税・収入印紙は不要。





【誤解2】注文書に収入印紙を貼っている

原則として注文書には収入印紙は貼らなくてもいい

継続的な取引きの際に、取引基本契約書を取交し、個別の受発注については、注文書・注文請書を使うことがあります。

この際、注文書にも収入印紙を貼っていることがありますが、実は、原則として、注文書には収入印紙を貼る必要がありません。

収入印紙を貼らなければならないのは、注文請書だけです。

注文書には収入印紙は不要

課税文書になるのは注文請書だけ。注文書は課税文書とはならないため、収入印紙を貼る必要はない。

課税文書としての契約書は、あくまで「契約(その予約を含みます。以下同じ。)の成立若しくは更改又は契約の内容の変更若しくは補充の事実(以下「契約の成立等」といいます。)を証すべき文書」のことです。

参照:No.7117 契約書の意義|国税庁

これに対し、「契約の申込み事実を証明する目的で作成される単なる申込書、注文書、依頼書等(以下「申込書等」という。)は、通常、課税対象にはなりません。」

参照:No.7118 申込書、注文書、依頼書等と表示された文書の取扱い|国税庁

個別契約が完全自動成立の場合は収入印紙が必要

もっとも、注文書を送付しただけで自動的に契約が成立する手続きとした場合、その発注書は、課税文書となります。

[平成29年4月1日現在法令等]

(途中省略)次に掲げるものは、一般的に契約書に該当するものとして取り扱われています。

(1)契約当事者の間の基本契約書、規約又は約款等に基づく申込みであることが記載されていて、一方の申込みにより自動的に契約が成立することとなっている場合における当該申込書等。ただし、契約の相手方当事者が別に請書等契約の成立を証明する文書を作成することが記載されているものは除かれます。

(2)(以下省略)

このため、注文書の送付により完全に自動的に契約が成立する手続きでは、印紙税の節約のメリットはありません。

この他、申込書・注文書・発注書の印紙税の計算や収入印紙につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

注文書の印紙(収入印紙)はどちらが貼るものなのでしょうか?

ポイント
  • 注文書は不課税文書であり、印紙税・収入印紙は不要。
  • ただし、完全自動成立の注文書は課税文書。





【誤解3】とりあえず4,000円の収入印紙を貼っている

長期的・継続的契約書であっても7号文書に該当しないものもある

非常によくありがちな話ですが、長期的・継続的な契約書であれば、何でも7号文書に該当すると判断して、とりあえず4,000円の収入印紙を貼っていることがあります。

ところが、7号文書に該当するかどうかの判断は、意外と難しく、単に長期的・継続的な契約書だからといって、必ずしも7号文書に該当するとは限りません。

例えば、準委任型のソフトウェア・プログラム・システム・アプリ開発業務委託契約書やシステムエンジニアリング契約(SES)契約の場合は、7号文書に該当しません。

このため、原則としては、収入印紙を貼る必要がありません。

【意味・定義】優越的地位の濫用とは?

優越的地位の濫用とは、「自己の取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者が,取引の相手方に対し,その地位を利用して,正常な商慣習に照らし不当に不利益を与える行為」をいう。

4,000円の収入印紙が不要な場合

原則として、準委任の業務委託契約書は7号文書に該当せず、4,000円の収入印紙は不要。ただし、物品の売買の委託等に関する業務委託契約書は(準)委任型であっても7号文書該当する。

著作権(知的財産権)の譲渡がある契約書は1号文書

なお、著作権などの知的財産権(=無体財産権)の譲渡が発生する場合は、報酬・料金・委託料の書き方によっては、7号文書に該当しない(準)委任契約書であっても、1号文書に該当することもあります。

こうした、「無体財産権の譲渡に関する契約書」は、1号文書に該当します。

ここでいう無体財産権とは、特許権、実用新案権、商標権、意匠権、回路配置利用権、育成者権、商号および著作権をいいます(営業秘密は含まれません)。

1号文書に該当する場合、金額の記載のしかたによっては、4,000円より多い収入印紙を貼る必要がある可能性もあります。

ポイント
  • 長期的・継続的な内容の契約書であっても、7号文書=4,000円の印紙税・収入印紙が不要な場合もある。
  • ただし、この場合も、知的財産権の譲渡がある契約書は1号文書に該当する。





【誤解4】とりあえず200円の収入印紙を貼っている

請負契約書は2号文書だけとは限らない

スポットの請負契約でありがちですが、金額が少ない請負契約書に、とりあえず200円の収入印紙を貼っていることがあります。

請負契約書は、2号文書に該当します。

ですから、報酬・料金・委託料が小規模(1万円から100万円以下)の、よくありがちな請負契約書では、200円を貼ればいいようにも思われます。

ところが、こうした請負契約書のなかには、知的財産権の譲渡が含まれる場合もあります。

例えば、イラスト作成請負契約書、グラフィックデザイン作成請負契約書、ライティング請負契約書などがあります。

請負契約書は1号文書かつ2号文書の場合もありうる

こうした知的財産権の譲渡がある契約書は、2号文書であると同時に、1号文書でもあります。

ですから、例えば、報酬・料金・委託料が15万円(消費税税別)で、特に請負の報酬と知的財産権の譲渡対価が区別されて記載されていない場合は、この請負契約書は、1号文書として扱われます。

この場合、収入印紙は200円ではなく400円のものを貼る必要があります。

逆に、例えば、請負の報酬が8万円(消費税別)、知的財産権の譲渡対価が7万円(消費税別)と区別して記載されている場合は、この請負契約書は、2号文書として扱われます。

この場合、収入印紙は200円で済みます。

この他、請負型の業務委託契約書の収入印紙・印紙税額につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

請負契約書の印紙(印紙税・収入印紙)の金額はいくら?

ポイント
  • 1号文書かつ2号文書の場合、200円では印紙税・収入印紙が不足な場合もある。





【誤解5】知的財産権の譲渡があるのに1号文書に該当するという認識がない

このような誤解が生じるのは、請負契約書=2号文書という感覚が強すぎる、という問題があります。

それ以上に、知的財産権(無体財産権)の譲渡に関する契約書が1号文書に該当するという認識がそもそもない、という問題もあります。

すでに触れましたが、無体財産権とは、特許権、実用新案権、商標権、意匠権、回路配置利用権、育成者権、商号および著作権をいいます(営業秘密は含まれません)。

このうち、特に情報を扱う業務委託契約書では、著作権の譲渡が必ずと言っていいほど規定されています。

このような場合は、常に1号文書に該当する可能性を考慮して業務委託契約書を作成します。

ポイント
  • 業務委託契約書では、知的財産権(無体財産権)の譲渡が発生する可能性=1号文書に該当する可能性を常に考慮するべき。





【誤解6】「成果物がある=請負契約書=2号文書・7号文書」と思っている

これもよくありがちな誤解ですが、成果物があるかどうかは、その契約が請負契約かその他の契約かとは関係ありません。

請負契約は、「仕事の完成」と目的とした契約です。

請負契約とは?委任契約や業務委託契約との違いは?

確かに、この「仕事」の定型的な例としては、一定の成果物があります。

ただ、成果物が発生しない請負契約も存在します。

例えば、運送請負契約や、清掃業務請負契約などがあります。

ですから、契約内容で成果物が発生しないからといって、「請負契約書ではない=収入印紙がいらない」と決めつけてはいけません。

ポイント
  • 成果物の有無は、請負契約に該当するかどうかの決定的な判断基準にはならない。





【誤解7】契約書のコピー・写し・副本・謄本等には収入印紙を貼る必要がないと思っている

契約書のコピー(写し)は、そのままの状態であれば、収入印紙を貼る必要はありません。

ただし、次のように、契約の成立の証明となるようなコピー・写し・副本・謄本等には、収入印紙を貼る必要があります。

収入印紙を貼る必要のある契約書のコピー

次のような契約書は、コピー・写しであっても、収入印紙を貼る必要があります。

  • (1)契約当事者の双方又は文書の所持者以外の一方の署名又は押印があるもの
  • (2) 正本などと相違ないこと、又は写し、副本、謄本等であることなどの契約当事者の証明のあるもの

参考:No.7120 契約書を複数作成した場合の課税関係|国税庁

ポイント
  • コピー・写し・副本・謄本であっても、課税文書に該当し、印紙税・収入印紙が必要な場合もある。





収入印紙・印紙税の関連ページ

個々の業務委託契約書における印紙税・収入印紙につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。





印紙税の節税は電子契約サービスがおすすめ

印紙税の節税には、電子契約サービスの利用がおすすめです。

というのも、電子契約サービスは、他の方法に比べて、デメリットがほとんど無いからです。

印紙税を節税する方法は、さまざまあります。

具体的には、以下のものが考えられます。

印紙税を節税する方法
  1. コピーを作成する:原本を1部のみ作成し、一方の当事者のみが保有し、他方の当事者はコピーを保有する。
  2. 契約形態を変更する:節税のために準委任契約のような非課税の契約にする。
  3. 7号文書を2号文書・1号文書に変更する:取引基本契約に初回の注文書・注文請書や個別契約を綴じ込むことで7号文書から2号文書・1号文書に変える。

しかし、これらの方法には、以下のデメリットがあります。

印紙税の節税のデメリット
  • コピーを作成する:契約書のコピーは、原本に比べて証拠能力が低い。
  • 契約形態を変更する:節税のために契約形態を変えるのは本末転倒であり、節税の効果以上のデメリットが発生するリスクがある。
  • 7号文書を2号文書・1号文書に変更する:7号文書よりも印紙税の金額が減ることはあるものの、結局2号文書・1号文書として課税される。

これに対し、電子契約サービスは、有料ではあるものの、その料金を上回る節税効果があり、上記のようなデメリットがありません。

電子契約サービスのメリット
  1. 電子契約サービスを利用した場合、双方に証拠として電子署名がなされた契約書のデータが残るため、コピーの契約書よりも証拠能力が高い。
  2. 電子契約サービスは印紙税が発生しないため、印紙税を考慮した契約形態にする必要がない。
  3. 電子契約サービスは印紙税が発生しないため、7号文書に2号文書や1号文書を同轍する必要はなく、そもそも契約書を製本する必要すらない。

このように、印紙税の節税には、電子契約サービスの利用が、最もおすすめです。

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業務委託契約書の収入印紙・印紙税の誤解に関するよくある質問

業務委託契約書の収入印紙・印紙税の誤解には、どのようなものがありますか?
業務委託契約書の収入印紙・印紙税の誤解には、次のようなものがあります。

  • 【誤解1】(準)委任契約書に収入印紙を貼っている
  • 【誤解2】注文書に収入印紙を貼っている
  • 【誤解3】とりあえず4,000円の収入印紙を貼っている
  • 【誤解4】とりあえず200円の収入印紙を貼っている
  • 【誤解5】知的財産権の譲渡があるのに1号文書に該当するという認識がない
  • 【誤解6】「成果物がある=請負契約書=2号文書・7号文書」と思っている
  • 【誤解7】契約書のコピー・写し・副本・謄本等には収入印紙を貼る必要がないと思っている
業務委託契約書で本来は貼らなくてもいい収入印紙を貼っていることはありますか?
原則として、準委任契約の業務委託契約書や注文書には収入印紙を貼る必要が無いにもかかわらず、収入印紙を貼っている場合があります。